バリ島全般

バリのお葬式について

バリ人はお葬式のために自分の村にある字(バンジャール)を大切にします。
何よりバンジャールでの活動、寄り合いを仕事より何より最優先させます。
何がそんなに彼らをバンジャールに引き止めているのかなと思ってました。

バリ人の中ではお葬式というのは人生の最大関心事です。
それは一つの大きな理由に、お葬式こそ、自分の大きなステップアップのイベントであるという、集団意識があって、とてもお葬式に莫大なエネルギーを費やします。
それを執り行うのがバンジャールという共同体の仕事だからです。
最後のお葬式をバンジャールで取り行ってもらえないというのが、習慣法の中で最大の罰則になってます。

バリ人のお葬式は、お通夜→棺桶を作る儀式→亡くなった方の清めの沐浴の儀式→前夜の見送りの儀式→亡骸の火葬→海への散骨→魂の復活の儀式→魂の見送りの儀式→家族の祈りの為の巡礼というプロセスで進みます。

海への散骨までに1ヶ月くらいかけて、その後時間をおいて、魂の復活の儀式から巡礼までは、だいたい2週間かけます。(近年場所によっては、こういう長いプロセスを経ないでやってしまうところも出てきてます。)
また、お通夜の後、一度土葬して、準備万端にしてから、次のプロセスに移るというのが一般家庭では普通ですが、お坊さん(マンクやパンデタやポダンダやデュクなどの高僧)がなくなると土葬はせずに、海への散骨までは一気に終えてしまいます。
また、魂の復活、いい場所に行ってもらうように皆で祈る儀式はまた時間をおいてまた華々しく行う場合がほとんどです。

このように相当な莫大なエネルギーをそこに注ぐのは、この世だけでないあの世の存在と、生まれ変わりが日常の意識だからです。
人は生まれ変わってくるというのを100%信じていて、子供が生まれるとこの子は誰の生まれ変わりかとパラノルマと言われるみえる人のところに聞きにいきます。
バリ人は、「死ぬ時には何も持っていけない。」というのが合言葉です。死ぬ時に持っていけるのはカルマだから欲張ったらいけないし、いいことして生きよう、と言っています。


弔問とお葬式の準備
 (お供えや使用するものの製作)
弔問に村の人或いは知り合いが訪れますが、その形は色々です。
お米やヤシの実を持ってお悔やみを言いにくる村人、その魂を癒すために毎夜音楽や踊りを披露する楽団、家の人のお供え作りやお葬式の準備をお手伝いする大きな親戚の人々、たくさんの人を巻き込んでお葬式の最初がスタートします。


ご遺体の清め、沐浴
ご遺体は儀式を通して今までは手厚く中央の祭壇に安置されてましたが、ここでやっと皆はご遺体とご対面し、各寺の聖水やジャムーによって清め、体に植物を使って飾り付けをし、むしろで包まれ、その上に道案内をする法具を模したものが置かれ、旅立ちの準備が整いました。


お葬式で使うお供え
宇宙的な、宇宙船のような、数々のお供えが散々作られます。


お葬式の儀式で行われる寸劇

船を形取った入れ物の中に、お供えが配置されて、そこには、望遠鏡や、お米や、傘、お金など、旅立ちに必要なものが揃えられていて、孫たちがその船の周りをくるくるまわります。
そして1番上の孫が、「お爺ちゃーん今どこ渡ってるのー?もうすぐ着くー?」とかなんとか、お話をしながら、望遠鏡を覗きます。「じゃお金を持って行ってねー。」などなど、バリ人のユーモアはこういう時にもみられます。


前夜の魂の旅立ち、祈りの儀式
夜中の12時に皆が集まって、お坊様が真ん中の高い段から送る歌を歌い始めます。そうすると、電気がせされ、線香の日だけが見える静寂の真っ暗闇が広がります。それがなくなったものの見る世界です。その闇にお坊様のウタと線香の小さな火、それと皆の祈りだけを道しるべに亡くなった人はここで体と魂が離れ、旅立ちの準備をして、旅立って行きます。
バリ人のお葬式は、豪華で賑やかなのが一般の認識ですが、本当はこの静寂の儀が本質で1番大切なものとなってます。
残念ながらそこに出会うお客さんはそんなに多く無いので、バリのお葬式というと火葬のシーンが有名ですが、本質はここの式に存在します。


遺体の乗り物

遺体の乗り物はその人の出身の家門によってもちがうし、その方の生前の村での役割(職業)によっても乗り物の種類が違います。例えば、高僧の場合は白い牛で、家門によっても、獅子、ウシ、獅子魚、など色々です。その乗り物を作るのに、時間がかかってました。それは、亡くなった方を入れておく棺桶とは別で、遺体の旅立ちの際には、お色直しするのです。
その乗り物と別に遺体を運ぶのりものというのもあります。
なので、最低3回、行列のためだけにも2回ほど遺体をその儀式に相応しい入れ物に変えていくのです。


火葬のための行列と火葬

亡くなった方が迷わないように、カジャン(死者への書)と言われる布に描かれた巻物を亡くなった方の上において火葬します。そのカジャンはとても大切なものです。それ以外にも散々の必要品、5つの金属、バリヒンズーに伝わるお供えの形のエネルギー発生装置、縁のある各寺から集められた聖水、それらのものとともに火葬します。


海への散骨

火葬の後、骨を拾って砕きそれをまた人の形に組み立て、お供えで飾り付けてムシロで巻いてそれに対して儀式を行います。
その上には人型に製作した人形をその方のシンボルとして作ります。その人形とそのムシロを海へ散骨に行くのです。家族やバンジャールの人の祈りで始まってまた祈りで散骨します。


魂の復活の儀式

お葬式の時に海に散骨する時に作ったその方に見立てた人形を、また同じプロセスで作り、そこには骨は無いけどそこに魂が乗っているとして復活の儀式を行います。その後、それをもって海に向かって夜中に出発します。

(文責 :Hiromi Wada)

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